棚卸表の作り方 飲食店の原価ズレを防ぐ基本

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飲食店の経営で「売上はあるのに利益が残らない」と感じるとき、原因の一つとして考えたいのが原価のズレです。

メニューごとに原価計算をしていても、実際の営業ではレシピ通りに食材が使われるとは限りません。

仕込みすぎ、計量のばらつき、使い忘れ、期限切れ、発注ミス、廃棄ロスなどが重なると、想定していた原価と実際の原価に差が出ます。

このズレを把握するために必要なのが、棚卸表です。

棚卸表というと、「月末に在庫を数えるための表」と考える人も多いかもしれません。

もちろん在庫数を確認することは重要です。

しかし、飲食店の棚卸表は、ただ食材の数を数えるためだけのものではありません。

本当に重要なのは、在庫を金額で把握し、原価のズレや発注のムダに気づける状態にすることです。

たとえば、冷蔵庫に食材が残っていることは目で見れば分かります。

しかし、その在庫がいくら分残っているのか、仕入れすぎなのか、使い切れていないのか、原価率にどのくらい影響しているのかまでは、感覚だけでは分かりません。

棚卸表を使うと、食材ごとの数量、単価、在庫金額が見えるようになります。

その結果、発注量の調整、仕込み量の見直し、廃棄ロスの削減、原価率の安定につなげることができます。

この記事では、飲食店向けに棚卸表の作り方と、原価ズレを防ぐための基本を分かりやすく解説します。

棚卸表とは何か

棚卸表とは、店舗に残っている食材や商品の数量と金額を記録するための表です。

飲食店では、肉、魚、野菜、米、調味料、ドリンク、冷凍食品、乾物、消耗品に近い食材など、さまざまな在庫を抱えています。

これらを定期的に確認し、「何が」「どれだけ」「いくら分」残っているのかを見えるようにするのが棚卸表です。

棚卸表がない状態では、在庫の把握がどうしても感覚に頼りやすくなります。

「まだ少し残っているはず」 「たぶん足りると思う」 「念のため多めに発注しておこう」

このような判断は、現場ではよくあります。

もちろん経験や勘は大切です。

しかし、感覚だけで在庫管理を続けると、発注過多や欠品が起きやすくなります。

発注が多すぎれば在庫が余り、保管期間が長くなり、期限切れや品質劣化によるロスが発生します。

逆に少なすぎれば、売れるはずの商品が売れず、機会損失につながります。

棚卸表は、このような「多すぎる」「少なすぎる」を数字で判断するための道具です。

さらに、棚卸表では在庫を金額で見ることが重要です。

在庫数だけでは、利益への影響が分かりにくいからです。

たとえば、レタスが少し余っている場合と、牛肉が少し余っている場合では、同じ「少し」でも金額の重みが違います。

つまり棚卸表では、数量だけでなく、単価と在庫金額まで記録することが大切です。

棚卸表が原価ズレを防ぐ理由

飲食店の原価には、大きく分けて「理論原価」と「実際原価」があります。

理論原価とは、レシピ通りに作った場合の計算上の原価です。

たとえば、パスタ1食に使う麺、ソース、野菜、肉、チーズの量を決め、それぞれの仕入れ単価から計算する原価です。

一方、実際原価とは、実際の仕入れ、使用量、在庫、廃棄を踏まえた現場の原価です。

飲食店では、この理論原価と実際原価がズレることがあります。

原因はさまざまです。

  • レシピより多く食材を使っている
  • 仕込みで余りが出ている
  • 期限切れで廃棄している
  • 発注量が多すぎて在庫が余っている
  • 使い忘れで食材が劣化している
  • 価格改定後の仕入れ単価を反映できていない

これらは、毎日の営業の中では小さなズレに見えます。

しかし、月単位で見ると大きな差になります。

たとえば、月商300万円の店舗で、想定していた原価率が30%だったとします。

この場合、想定原価は90万円です。

しかし、実際には原価率が35%になっていた場合、実際原価は105万円です。

差額は15万円です。

これは1ヶ月の利益から消えている金額です。

年間にすると180万円になります。

ここで重要なのは、この差が売上表だけでは分かりにくいということです。

売上は確認していても、在庫の増減や廃棄ロスを見ていなければ、なぜ原価率が上がったのか分かりません。

棚卸表を使うと、仕入れた食材がどれだけ残っているか、どの食材が余っているか、在庫金額が増えていないかを確認できます。

その結果、原価ズレの原因を探しやすくなります。

つまり棚卸表は、原価率をただ計算するための表ではなく、原価がズレる原因を見つけるための表なのです。

棚卸表に入れるべき基本項目

棚卸表は、最初から複雑にしすぎる必要はありません。

むしろ、現場で続けられる形にすることが大切です。

棚卸表に最低限入れたい項目は、次の通りです。

  • 日付
  • 食材名
  • 分類
  • 単位
  • 数量
  • 単価
  • 在庫金額
  • 保管場所
  • メモ

この中でも特に重要なのは、食材名、数量、単価、在庫金額です。

食材名は、あとから見返したときに分かりやすい名称にします。

たとえば「肉」ではなく、「鶏もも肉」「牛バラ肉」「豚ひき肉」のように、実際に発注や仕込みで使う名前にします。

分類は、肉類、魚介類、野菜、乳製品、調味料、ドリンク、冷凍品、乾物などに分けると集計しやすくなります。

単位は、kg、g、本、個、袋、ケースなど、店舗で管理しやすい単位にします。

ここがバラバラだと、後で集計しにくくなります。

たとえば、同じ食材を「1袋」「500g」「0.5kg」のように複数の単位で記録すると、数字が分かりにくくなります。

数量は、実際に残っている量を記録します。

単価は、仕入れ単価を入れます。

在庫金額は、数量と単価を掛けて計算します。

この在庫金額が見えるようになると、在庫が利益に与える影響を理解しやすくなります。

たとえば、冷凍庫に肉が多く残っている場合、見た目には「在庫がある」だけですが、金額で見ると数万円分になっていることがあります。

在庫は多ければ安心というものではありません。

使い切れなければ、いずれ廃棄や品質低下につながります。

だからこそ、棚卸表では在庫を金額で見ることが重要なのです。

棚卸表の作り方

棚卸表を作るときは、難しいシステムをいきなり導入する必要はありません。

最初はExcelやGoogleスプレッドシートで十分です。

大切なのは、毎月同じ形式で記録できることです。

まず、縦方向に食材名を並べます。

横方向に、分類、単位、数量、単価、在庫金額、保管場所、メモを入れます。

在庫金額は「数量×単価」で自動計算できるようにしておくと便利です。

たとえば、鶏もも肉が3kg残っていて、1kgあたり900円なら、在庫金額は2,700円です。

このように、食材ごとの在庫金額が見えると、どの食材にお金が残っているのかが分かります。

次に、分類別の合計を出します。

肉類でいくら、野菜でいくら、調味料でいくら、ドリンクでいくら残っているのかを見ます。

分類別に見ることで、在庫が偏っていないか確認できます。

たとえば、野菜の在庫金額が毎月多いなら、発注量が多すぎる可能性があります。

肉類の在庫が急に増えているなら、仕入れタイミングや販売数にズレがあるかもしれません。

棚卸表は、単に月末に数字を埋めるだけでは意味がありません。

前月と比較して、増えた食材、減った食材、毎月残り続けている食材を確認することが重要です。

この比較によって、初めて改善のヒントが見えてきます。

棚卸しはどの頻度で行うべきか

棚卸しの頻度は、店舗の規模や業態によって変わります。

ただし、飲食店の場合、最低でも月1回は棚卸しを行うのがおすすめです。

月1回の棚卸しを行うことで、月次の原価率や在庫金額を確認しやすくなります。

一方で、高額食材や傷みやすい食材は、月1回だけでは不十分な場合があります。

肉、魚、乳製品、生鮮野菜、手作りスイーツなどは、ロスになったときの影響が大きいため、週1回、場合によっては毎日確認してもよいでしょう。

ただし、すべての食材を毎日細かく棚卸ししようとすると、現場負担が大きくなります。

そのため、頻度を分けるのが現実的です。

  • 毎日確認:高額食材、傷みやすい食材、売れ残りやすい商品
  • 週1回確認:主要食材、冷蔵品、仕込み品
  • 月1回確認:乾物、調味料、冷凍品、ドリンク在庫

このように分けると、負担を抑えながら重要な在庫を管理しやすくなります。

棚卸しで大切なのは、完璧にやることではなく、継続することです。

最初から細かくしすぎると続かなくなります。

まずは、金額の大きい食材、ロスになりやすい食材、原価率に影響しやすい食材から始めるのが現実的です。

棚卸表を見るときのチェックポイント

棚卸表を作ったら、数字を入力して終わりにしてはいけません。

大切なのは、入力した数字を見て、何を改善するかを考えることです。

棚卸表を見るときは、まず在庫金額の大きい食材を確認します。

在庫金額が大きい食材は、利益への影響も大きくなります。

特に、毎月同じ食材が多く残っている場合は注意が必要です。

その食材は、発注量が多すぎるのかもしれません。

メニューで使い切れていないのかもしれません。

仕込み量が売上に合っていないのかもしれません。

次に、前月と比べて急に増えている在庫を確認します。

急に在庫が増えた食材は、発注ミスや販売数の低下が原因になっている可能性があります。

また、保管場所ごとの在庫も確認します。

冷蔵庫、冷凍庫、乾物棚、ドリンク棚など、保管場所ごとに在庫が偏っていないかを見ることで、使い忘れや二重発注を防ぎやすくなります。

さらに、棚卸表はロス高表と一緒に見ると効果が高くなります。

棚卸表で「在庫が多い」と分かり、ロス高表で「その食材の廃棄が多い」と分かれば、発注量や仕込み量を見直すべきだと判断できます。

つまり、棚卸表は単体で見るよりも、ロス高表と組み合わせることで改善につながりやすくなります。

棚卸表を続けるためのコツ

棚卸表は、作ることよりも続けることが大切です。

どれだけ立派な表を作っても、現場で入力されなければ意味がありません。

続けるためには、できるだけシンプルにすることが重要です。

最初からすべての食材を細かく管理しようとすると、現場の負担が大きくなります。

まずは、原価への影響が大きい食材だけでも構いません。

たとえば、肉、魚、乳製品、スイーツ、ドリンクなど、金額の大きいものから始めます。

次に、入力担当を決めます。

誰が入力するのか決まっていないと、棚卸しは後回しになりやすいです。

現場スタッフが数量を数え、店長や経営者が金額を確認する形にすると、役割分担がしやすくなります。

また、棚卸しをする日を固定することも大切です。

毎月末、毎週日曜日の閉店後、毎週月曜日の開店前など、店舗に合ったタイミングを決めておきます。

棚卸しのタイミングが決まっていないと、「忙しいからまた今度」になってしまいます。

棚卸表は、完璧さより継続性です。

多少ざっくりでも、毎月同じルールで記録することで、比較できる数字が残ります。

その積み重ねが、原価ズレやロスの発見につながります。

棚卸表とロス高表はセットで使うと強い

棚卸表は、残っている在庫を見るための表です。

ロス高表は、捨てた金額と理由を見るための表です。

この2つは役割が違います。

棚卸表だけでは、在庫が多いことは分かっても、なぜ余ったのかまでは分かりにくいです。

一方、ロス高表だけでは、廃棄したものは分かっても、全体の在庫バランスまでは見えにくいです。

だからこそ、棚卸表とロス高表はセットで使うと効果的です。

たとえば、棚卸表でレタスの在庫が毎月多いと分かったとします。

さらにロス高表で、レタスの廃棄が毎週出ていることが分かった場合、発注量が多すぎる可能性があります。

あるいは、仕込み量が多いのか、メニューで使い切れていないのかもしれません。

このように、棚卸表で在庫を見て、ロス高表で廃棄を見ることで、問題の原因が見えやすくなります。

在庫は棚卸表で見る。

廃棄はロス高表で見る。

この2つを組み合わせることで、飲食店の原価管理はかなりしやすくなります。

まとめ

棚卸表は、飲食店の在庫と原価を見える化するための基本ツールです。

ただ食材の数を数えるだけではなく、数量、単価、在庫金額を記録することで、原価ズレや発注ミス、使い忘れ、過剰在庫に気づくことができます。

特に、食材費や物流費が上がりやすい時代では、同じ在庫のムダでも以前より利益への影響が大きくなります。

だからこそ、在庫を感覚で見るのではなく、棚卸表で数字として確認することが重要です。

  • 棚卸表は、在庫数と在庫金額を見るための表
  • 数量だけでなく、単価と金額まで記録する
  • 月1回を基本に、高額食材や傷みやすい食材は頻度を上げる
  • 前月比較で、在庫の増減を見る
  • ロス高表と組み合わせると、原価ズレの原因を探しやすい

棚卸表は、現場を縛るための表ではありません。

利益を守るための表です。

もし今、在庫管理を感覚で行っているなら、まずは主要食材だけでも棚卸表に記録してみてください。

数字で見るだけで、「思ったより残っている食材」や「毎月余っている食材」に気づくことがあります。

その気づきが、発注改善、仕込み改善、ロス削減、そして利益改善の第一歩になります。

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