飲食店の利益を考えるうえで、避けて通れないのが「廃棄ロス」です。
廃棄ロスとは、仕入れた食材や作った商品が売上にならず、捨てられてしまうことです。
例えば、使い切れなかった野菜、売れ残ったケーキ、仕込みすぎた惣菜、期限切れになった食材などが該当します。
一つひとつは小さな金額に見えるかもしれません。
しかし、飲食店ではこの小さなロスが毎日のように発生します。
そして、記録されないまま放置されることで、気づかないうちに利益を削っていきます。
前回までの記事では、廃棄ロスが「見えないコスト」になることを解説しました。
今回の記事では、さらに一歩進んで、廃棄ロスを見える化すると何が変わるのか、そしてロス高表を使うことでどのように利益改善につながるのかを解説します。
結論から言うと、廃棄ロスは「減らそう」と思うだけでは減りません。
何を、どれだけ、いくら分、なぜ捨てているのか。
これを記録して初めて、改善できるようになります。
そのために役立つのが、ロス高表です。
ロス高表は、単なる記録表ではありません。
お店の利益を守るための、現場の改善ツールです。
ロス高表とは何か

ロス高表とは、廃棄した食材や商品の内容、数量、金額、理由などを記録する表のことです。
棚卸表が「今、何がどれだけ残っているか」を見るための表だとすれば、ロス高表は「何を、どれだけ捨てたか」を見るための表です。
つまり、棚卸表は在庫を見るもの、ロス高表は損失を見るものです。
飲食店では、売上は毎日確認している店舗が多いです。
しかし、廃棄ロスを毎日記録している店舗は意外と少ないです。
そのため、実際にはかなりのロスが出ていても、経営者や店長が正確に把握できていないケースがあります。
例えば、閉店後に余った食材を少し捨てる。
期限が切れた材料を処分する。
売れ残った商品を廃棄する。
こうしたことは日常的に起こります。
しかし、それを記録していなければ、あとから振り返ることはできません。
「なんとなく最近ロスが多い気がする」
「たぶんこのメニューが余っている」
「仕込みが少し多かったかもしれない」
このように、感覚だけで判断することになります。
感覚は大切ですが、感覚だけでは改善の精度が上がりません。
ロス高表を使うことで、曖昧だったロスが数字として見えるようになります。
廃棄ロスを記録しないと改善できない理由

廃棄ロスが減らない店舗には、共通点があります。
それは、ロスを記録していないことです。
記録していないと、何が原因でロスが出ているのか分かりません。
例えば、毎週同じ食材が余っているのかもしれません。
特定の曜日だけ廃棄が多いのかもしれません。
雨の日に仕込みすぎているのかもしれません。
特定のメニューだけ売れ残っているのかもしれません。
発注量が多すぎるのかもしれません。
保管方法が悪く、食材が傷みやすくなっているのかもしれません。
しかし、記録がなければ、その原因を特定できません。
原因が分からなければ、対策もできません。
その結果、同じロスが繰り返されます。
飲食店のロスは、一度だけ発生するものではありません。
多くの場合、同じような原因で何度も発生します。
例えば、毎週金曜日に多く仕込んで余る。
ランチ用に作った商品が毎日少しずつ残る。
デザートの仕込み量が来店数に合っていない。
こうした問題は、現場ではよくあります。
ただし、記録がなければ「よくあること」で終わってしまいます。
一方で、ロス高表に記録していれば、数字として見えてきます。
数字として見えれば、対策を立てられます。
つまり、廃棄ロスを減らす第一歩は、努力ではなく記録です。
ロス高表で記録すべき項目

ロス高表を作るときは、難しく考えすぎる必要はありません。
最初から完璧な表を作ろうとすると、現場で続かなくなります。
大切なのは、毎日簡単に記録できる形にすることです。
最低限、記録したい項目は次の通りです。
- 日付
- 廃棄した食材・商品名
- 数量
- 単価
- ロス金額
- ロスの理由
- 改善メモ
この中でも特に重要なのは、ロス金額とロスの理由です。
数量だけを記録しても、利益への影響は分かりにくいです。
例えば、キャベツを少し廃棄した場合と、牛肉を少し廃棄した場合では、金額のインパクトが違います。
同じ「少し捨てた」でも、損失額は大きく変わります。
だからこそ、数量だけでなく金額で見ることが大切です。
また、理由を記録することも重要です。
単に「廃棄」と書くだけでは、改善につながりません。
例えば、理由が「期限切れ」なのか「仕込みすぎ」なのか「売れ残り」なのかで、対策は変わります。
期限切れなら、発注量や在庫回転を見直す必要があります。
仕込みすぎなら、仕込み量の基準を見直す必要があります。
売れ残りなら、販売方法やメニュー構成を見直す必要があります。
つまり、ロス高表は「捨てたものを記録する表」ではなく、「改善するための原因を見つける表」なのです。
廃棄ロスを金額で見ると危機感が変わる
廃棄ロスは、量だけで見ると危機感が生まれにくいです。
「少し余っただけ」
「数個捨てただけ」
「今日はたまたま残っただけ」
このように考えてしまうからです。
しかし、金額で見ると印象は大きく変わります。
例えば、1日2,000円のロスが出ている場合を考えてみましょう。
1日だけなら、それほど大きく感じないかもしれません。
しかし、30日続けば約6万円です。
1年間続けば約72万円です。
さらに、1日5,000円のロスなら、月に約15万円、年間では約180万円になります。
これは、かなり大きな金額です。
しかもこの金額は、売上ではなく利益から消えていきます。
飲食店で72万円や180万円の利益を増やすのは簡単ではありません。
新規客を増やす、客単価を上げる、回転率を上げるなど、相当な努力が必要です。
しかし、ロスを見える化して減らすことができれば、同じ売上でも利益が残りやすくなります。
つまり、ロス削減は「売上アップ」と同じくらい重要な利益改善策なのです。
ロス高表を使うと発注が変わる
ロス高表を使うことで、最初に変わりやすいのが発注です。
発注は飲食店の利益に大きく影響します。
多く発注しすぎれば、在庫が余ります。
在庫が余れば、保管期間が長くなります。
保管期間が長くなれば、品質が落ちます。
そして最終的に廃棄につながります。
逆に、発注が少なすぎると欠品が起こります。
欠品は売上機会の損失につながります。
つまり、発注は多すぎても少なすぎても問題です。
ロス高表を使うと、何が余りやすいのかが分かります。
例えば、毎週レタスの廃棄が多いと分かれば、発注量を少し減らす判断ができます。
毎月同じソースが期限切れになるなら、仕入れ単位を見直す必要があります。
特定の食材が頻繁に残るなら、その食材を使うメニューの販売数を確認する必要があります。
このように、ロス高表は発注改善の材料になります。
感覚ではなく、記録をもとに発注できるようになるのです。
ロス高表を使うと仕込み量が変わる
ロス高表は、仕込み量の改善にも役立ちます。
飲食店では、仕込み量の判断がとても難しいです。
多すぎれば余ります。
少なすぎれば売り切れます。
売り切れは機会損失ですが、作りすぎは廃棄ロスです。
このバランスを感覚だけで判断していると、ロスが発生しやすくなります。
ロス高表を使うと、どのメニューがどれくらい余っているかが見えてきます。
例えば、平日の夕方にケーキが余りやすい。
雨の日にランチの仕込みが余りやすい。
月曜日だけ惣菜が残りやすい。
こうした傾向が分かれば、仕込み量を調整できます。
「毎日同じ量を仕込む」のではなく、曜日や天候、予約状況に合わせて変えることができます。
これにより、売り逃しを防ぎながら、無駄な廃棄を減らしやすくなります。
ロス高表を使うとメニュー改善ができる
ロス高表は、メニュー改善にも役立ちます。
廃棄が多いメニューには、必ず理由があります。
売れていないのか。
仕込み量が多すぎるのか。
提供までの保存が難しいのか。
食材の使い回しができていないのか。
単価と原価のバランスが悪いのか。
記録を見れば、こうした問題に気づきやすくなります。
例えば、あるデザートが毎週売れ残っている場合、そのメニューは見直し対象です。
販売方法を変えるのか、仕込み量を減らすのか、メニューから外すのかを判断できます。
また、ある食材がよく余るなら、その食材を別メニューに活用できるかもしれません。
このように、ロスの記録はメニューの改善材料にもなります。
スタッフと改善を共有しやすくなる
ロス高表の良いところは、スタッフとの共有にも使えることです。
「ロスを減らして」と言うだけでは、現場は動きにくいです。
何を減らせばいいのか、どれくらい減らせばいいのか、なぜ減らす必要があるのかが分からないからです。
しかし、ロス高表があれば、具体的に伝えられます。
例えば、「先月はケーキの廃棄が3万円ありました」と伝えれば、問題が明確になります。
「雨の日はランチの仕込みロスが多いです」と分かれば、天候を見て仕込み量を調整できます。
「この食材は毎週余っています」と分かれば、発注やメニューを見直せます。
数字があると、感情ではなく事実で話せます。
これは現場改善にとても重要です。
ロスを責めるのではなく、どうすれば減らせるかを一緒に考えられるようになります。
ロス高表は利益改善の入口になる
ロス高表を使う目的は、ただ記録することではありません。
最終的な目的は、利益を改善することです。
廃棄ロスを減らすと、同じ売上でも利益が残りやすくなります。
例えば、月に10万円のロスを5万円に減らせた場合、単純に5万円分の利益改善になります。
年間では60万円です。
これは小さな金額ではありません。
しかも、ロス削減は新規集客よりも取り組みやすい場合があります。
新規のお客様を増やすには、広告やSNS、口コミ、商品力など、さまざまな要素が必要です。
一方で、ロス削減は今ある営業の中で改善できます。
もちろん簡単ではありません。
しかし、数字を記録して原因を見つければ、改善の方向性が見えてきます。
だからこそ、ロス高表は利益改善の入口になるのです。
まとめ
廃棄ロスは、飲食店の利益を静かに削る見えないコストです。
しかし、ロス高表を使って記録すれば、その見えないコストを見える化できます。
- 何を捨てているか分かる
- いくら損しているか分かる
- なぜロスが出ているか分かる
- 発注量を見直せる
- 仕込み量を調整できる
- メニュー改善につなげられる
- スタッフと改善を共有できる
ロスは、記録しなければ改善できません。
逆に言えば、記録すれば改善のきっかけが見えてきます。
飲食店経営では、売上を上げることも大切です。
しかし、同じくらい大切なのが、無駄に消えている利益を守ることです。
ロス高表は、そのための第一歩になります。
もし今、廃棄ロスを感覚でしか把握していないのであれば、まずは簡単な記録から始めてみてください。
数字が見えるだけで、お店の改善ポイントは必ず見つかります。


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